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諸葛菜

--時は蜀の建興12年秋8月23日。寿54歳。五丈原にて孔明落つ--

物語の中途にあって、突如割り入る訳者吉川英治氏の語り。

~孔明の死する前後を描くにあたって、原書三国志の描写は実に
精細を極めている。そしてその偉大なる「死」そのものの現実を、
あらゆる意味において詩化している~

吉川英治氏の後書に替える「篇外余禄」での一節。

『ひと口にいえば、三国志は曹操に始まって孔明に終わる二大英傑
の成敗争奪の跡を叙したものというもさしつかえない。』

『仲達は(孔明が)天下の奇才だ、と言ったが、私は偉大なる平凡人
と称えたいのである。孔明ほど正直な人は少ない。律儀実直である。
決して孔子孟子のような聖賢の円満人でもなければ奇矯なる快男児
でもない。ただその平凡が世に多い平凡と違って非常に大きいのである。

彼が軍を移駐して、ある地点からある地点へ移動すると、かならず兵舎
の構築とともに、付近の空閑地に蕪(かぶら)の種を蒔かせたということだ。
この蕪は春夏秋冬、いつでも成育するし、土壌もえらばない特質もある。
そしてその根から茎や葉まで生でも煮ても食べられるという利便がある
ので、兵の軍糧副食物としては絶好のものだったらしい。
こういう細かい点にもきのつくような人は、いわゆる豪傑英偉な人物の
頭脳ではもとめられないところであろう。正直律儀な人にして初めて思い
至る所である。とかく青い物の栄養に欠けがちな陣中食にこの蕪は随分
大きな戦力となったに違いない。
(中略)
で、この蕪の播植は、諸所の地方民の日常食にも分布されて、今も蜀の
江陵地方の民衆のあいだでは、この蕪のことを「諸葛菜」とよんで愛食
されているという』

(引用…講談社・吉川英治文庫・三国志(八))

まずは吉川英治版三国志、読了しました。

本来、三国が統一されて晋国が建つまでの話だと思ってはいましたが
孔明の死を以って一巻の終わりという形になっていました。

これについての説明、またその後の三国のそれぞれの展開について
気になる読者向けに、この『諸葛菜』と題された長い「説明的後書」が
記されています。

読後感の心地よさ、全八巻という長編は元より、この時代を長期間
かけて共に過ごした様な、ある意味達成感の様な感動で満たされて
います。

…やっぱり諸葛孔明は金城武氏の如き「甘いマスク」ではないだろう。。

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